「さらに言えば、デモ(強訴)という形式そのものが、現代の日本社会において有効性を失いつつあるのではないか。前近代の日本社会や現代の独裁国家においては、民意を政治に反映させる仕組みが他にないため、デモにもそれなりの意義がある。だが投票どころか選挙に立候補することさえ可能な現代の日本では、おのずとデモの効用は限定されざるを得ない。/現代の日本で革命や大規模デモが発生する可能性は極めて低く、万が一発生したところで、それによって財政問題や貧困問題などの諸々の社会問題がたちどころに解決するとも思えない。」(pp.227-228)
以上、引用が長くなったが、このようなこの本における筆者の意見には、賛否あるだろう。だが、最初の引用(文庫版あとがき)でしめしたように、歴史学の研究成果も、また、歴史的産物であるという意味においては、2011年以降のある時期の発言として、歴史に残る意義はあるであろう。
本書は、一揆についてのすぐれた研究書であると思うが、それ以上に、歴史学とは何であるか、歴史を書くとはどういうことか、を考えるきっかけになる本であると思う。
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