番組のなかでは、「日本人は川口市から出ていけ」と書いたプラカードを掲げた画像については、これは生成AIを使ったフェイク画像であると思われると言っていた。私の見るかぎりでは、そうと断定してはいなかった。この写真、背景に建物もあるし、人間の顔も何人もはっきりと分かる。これらの場所や人物が特定できなかった、ということなのだろうか。そういう調査をしたのなら、その経緯について触れておくべきであり、フェイクであることの証拠を示さなければならない。場所も人物も特定できなかった、人物については架空のものである可能性が高い、あるいは、実在の人物の顔の画像を利用したものであるが、その本人はかかわっていない、このようなことは調査したと思うのだが、はたしてどうだったのだろうか。
これは禍根を残すことになりかねない。ソーシャルメディア上には、いろんな画像、映像がある。中には、フェイク画像もあるはずである。このとき、自分の主張したいことに反するものについては、それはAIによるフェイクである、と言ってしまうことを、安易に許すことになる。すべてがフェイク画像であるというわけではなく、中にはリアルであるものもあるにちがいない。本当に伝えるべきリアルの映像を、きちんと伝えるためには、フェイク画像については、なぜそう判断できるのか、ということの専門家による判断の根拠をしめすことが、必須になってくる。
自分の主張に反するものは、それはフェイク画像である、偽情報である、と言い合うだけでは、あまりいい将来を考えられない。そう判断した根拠をしめす、それができるのが、マスコミであり、調査報道というべきものであるはずである。(このような仕事は際限のないことかもしれないが、マスコミは、いやマスコミだけが、それが出来る。)
この画像以外で、虚偽の書き込みや映像については、その証拠を示し、裏をとる取材を行っていたのに、この画像だけは、それが出来ていないという印象をうける。はたしてどうだったのだろうか。
木下顕伸が登場していたが、戦前の伝統的な右翼思想としての大アジア主義がどんなものであるのか、ということは、説明があってもよかったかもしれない。そのインタビューの背景に写っていたのは、頭山満の書であり、肖像であった、と判断できる。このような日本の伝統的右翼思想と、近代的な保守思想(エドマンド・バークにはじまり、日本では福田恆存や西部邁などがとなえたような)と、近年になってSNSで目立つようになったネトウヨなど、これらは、根本的にちがうものである。
2025年4月11日記
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