ロンドン憲章
2008-03-14


2008/03/14 當山日出夫

DDCH(Digital Documentation of Cultural Heritage)

第2回 文化遺産のデジタルドキュメンテーションと利活用に関するワークショップ (2008年3月8〜9日 奈良文化財研究所)

この2日目(9日)は、あいにく出席できなかったので、予稿集を読むことにする。発表のほとんどは、考古学遺跡・遺物の3D計測について論じている。

個々の発表(論文)は、それぞれに非常に面白い。そして、共通することは、3D計測とその結果の保存について、なにがしかの問題提起をしていることである。

ここで個人的感想を言うならば、3D画像が「デジタルアーカイブ」として残ったとしても、はたして、それを後世の人間は、どのように評価するだろうか、あるいは、使うだろうか、ということ。これには、いろんな点で課題がある。例えば、以下のような問題点である。

特定のアプリケーションに依存した場合、利用できくなる可能性がある。データの長期保存と利用が大きな課題のひとつである。

遺跡・遺物を3D計測するとして、その遺跡・遺物から何を読み取りたいと思っておこなうのか。その研究目的、研究者の意識のもちようによって、どのように計測するか、また、それをどのように利用するか(3D画像の作成)も違ってくる。

このような意味において、このワークショップを企画した門林理恵子さんの

デジタル文化遺産情報の標準化動向−イギリスの事例−

が、非常に興味深い。ここでは、「ロンドン憲章」(The London Charter)の紹介がある。論文から一部引用すると、

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ロンドン憲章は、知的完全性、信頼性、透明性、ドキュメンテーション、標準、持続性、アクセスという点から、文化遺産の研究およびコミュニケーションにおける3次元可視化の利用の目的と原則を定義することを目的としたものであり、(以下略)

ロンドン憲章で特徴的なことは、透明性とParadataという2つの概念である。 (中略) Paradataとは造語であり、研究の末に3次元可視化に至るまでに生み出された知的財産を指す。これは、現在、3次元可視化の方法や成果物の理解や評価に必要な情報の多くが失われていることを意識した用語なのである。

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この指摘は重要である。特に3D可視化が、3Dデジタルアーカイブとして使われようとしている現在、どのようにして、そのデータが作られたかのプロセスを記録しておくことが、必要である。これは、別に、3D画像に限らない、通常の画像データであっても、あるいは、テキストデータであっても同様である。このあたりの議論が、日本では、まだまだ不足している、と感じる。

このロンドン憲章、日本語訳版もある。Google で検索する場合、「ロンドン憲章」ではなく、原語の「The London Charter」で検索した方がいい。原文に付随して、日本語訳版(PDF、HTML)が出る。

3D画像のみならず、いわゆる「デジタルアーカイブ」に興味関心のある人には必読といえよう。

當山日出夫(とうやまひでお)

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