2008/11/29 當山日出夫
『図書館・アーカイブズとは何か』(別冊 環 15).藤原書店.2008
最近における、「アーカイブズ」を考えるうえで、必読の一冊である。巻頭の鼎談が、粕谷一希・菊地光興・長尾真、の方々。それに、高山正也など、現在の日本でアーカイブズにかかわっている、錚々たるメンバーが並んでいる。
中に、ARGの岡本真さんの名前もある。「ARGの10年」と題して、寄稿しておいでである。このなかで、岡本さんは、ARGのあゆみをふりかえっておいでであるが、基本的なこととして、
情報は発信するところに集まる(p.177)
このことを確認することになっている。情報の発信と、そこに集まる情報、その蓄積が、ARGの10年になる。その経緯のなかで、方向性が変わってきたことも記されている。
なかで、特に引用しておきたいのは、次の記述、
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10年前、ARG創刊前後の私が感動を覚えたのは、研究者や専門家がインターネットで発信しあう風景である。そして、職業的な研究者でなくても、その輪の中に入れる可能性である。だが、あくまでも固定された知や情報を取り扱うことが、いまの図書館・アーカイブズの視野の範囲ではないだろうか。いや、それですら捌ききれないのが現実だろう。
(中略)
流動・変転する中にあってこそ、(1)専門家の横断と(2)市民と専門家の接続を叶えたいのである。(pp.181-182)
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この指摘こそ、今後の、人文情報学(デジタル・ヒューマニティーズ)が、取り組まなければならない課題の一つである。
他の文章についても言及したいが、とりあえず、岡本さんの文章について触れてみた次第。
當山日出夫(とうやまひでお)
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