新常用漢字:叱(しかる)はなぜ問題か
2009-01-22


2009/01/22 當山日出夫

この問題、小形さんが、しかるべく説明してくださるであろうが、とりあえず、私の見解をのべておく。

もじのなまえ 2009年1月18日
http://d.hatena.ne.jp/ogwata/2009011/p1

※なお、注意すべきは、「JIS X 0213」といっても、最初に制定された「2000年版」と、現行のVISTAマシンに搭載の「IS X 0213(2004)改訂版」は、別のものである、ということである。

1.
今般の、新常用漢字表の改訂にあたって、「叱」(しかる)が、追加の見通し。特に、この字を排除しなければならない、積極的な理由は考えつかないので、たぶん採用されるだろう。

2.
委員会の案では、印刷標準字体の、「口+七」の字が採用されている。

3.
現在の通常のパソコン(XP、携帯電話)で、見える文字は、「口+ヒ」の方である。しかし、新しい、VISTAであれば、「口+七」の字を見ることが可能。厳密には、XPでも、0213(04)フォントを利用可能であるが、あまり、そういう人はいないだろう。

4.
(1)口+七(印刷標準字体、新常用漢字表案の字体)は、現行の、JIS規格(0213:2004)にふくまれる。第3水準。句点位置は、1-47-52。Unicodeでは、「U+20B9F」。

(2)口+ヒ(XPや携帯電話で見える字)は、JIS規格では、0208の第1水準。句点位置は、1-28-24。Unicodeでは、「U+5341」。

5.
このまま「口+七」の字体で、パブリックコメントにもちこんだら、どうなるか。VISTAユーザにとっては、両方の字が見える

(※ただし、「口+七」は機種依存となるが、気にする人はあまりいないだろう。同じく機種依存の、「高=はしごだか、の方)を平気で使うひとがいるのだから。しかも、これは、JIS規格外であるから、もっとたちが悪い。)

一方、旧XPのユーザにとっては、「口+ヒ」の、字体しか見えない。つまり、パブリックコメントは、画像データとして示すであろうが、それについて論じることが出来ない。少なくとも、「口+ヒ」と「口+七」の違いについては、無理である。

委員会としては、パブリックコメントに際して、この問題をきちんと説明しておかなければならないであろう。なぜなら、この「叱(しかる)」の字体差は、単なるデザイン差ではない。筆画の方向が、「七」と「ヒ」とは、左右が逆になる。教育の場面においては、いずれを採用するかは、非常に大きな問題である。文字は、手で書くものである、という基本認識から考えると、これは、重要な字体差である。

6.
また、技術的な問題としては、「口+ヒ」(叱、第1水準)であれば、問題はない。しかし、「口+七」では、いささか問題がある。

まあ、見えるということであるならば、UTF-8対応のエディタやワープロならなんとかなる。(※でも、私のためしたところ、GoogleChromeでは、UTF-8に設定しても、字が化けた。IE(7)とFireFox(3)は大丈夫。)

ただ、前述のごとく、XPマシン(0208)では、「口+七」の字は表示されない。これは、私のXPで確認した。MSゴシック・明朝についてであるが。

7.
では、このような字について、パブリックコメントをつのるといっても、どのようにするつもりであるのか。情報機器に対応した漢字政策ということを考えるならば、その議論の場も、インターネットを想定しておかなければならない。

なお、また別の問題として、「葛」のことがあるが、これは追ってのちほど。この「葛」の件、今日の朝日新聞(大阪版)に、白石明彦(編集委員)の記事が載っている。

當山日出夫(とうやまひでお)

追記 2009/01/24
「y」さんのコメントにしたがって、一部書き換えました。
[日本語]
[文字・テキスト]

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