2009-01-28
2009/01/28 當山日出夫
朝日新聞の「新常用漢字表を読む」(白石明彦・編集委員)について、いささか。
第3回目(下)は、「暗い世相字種に反映」。
新聞記事だから、このような見出しになるのだろうが、同じことを、さらに視点を変えて考えるならば、サンプリングの問題。
以前に、このブログでも書いたことだが、確認しておく。漢字だけの調査から、漢字のことは、わからないのである。
「俺」を例に書くと、
1.あることばを日本語(新常用漢字表の場合「国語」というべきか)で、使うかどうか。自分のことを「おれ」というか、いわないか。(これは、まあ、使用例がある、という方向になるだろう。)
2.では、その言葉を、文字で書くかどうか。文字化された言語(文章の表記)にも、様々な位相差がある。「おれ」は文字に書くことばであろうか。このあたりで、位相差が見える。
3.次に、その表記において、どのような文字をつかうか。「おれ」「オレ」「俺」、少なくとも、日本語(国語)においては、三通りの表記法がある。どの表記法が、どの種の文献に見られるか。表記法の位相差についての観察。「俺」の場合、ネット調査に使用例が多いとのことであるが、では、「おれ」
「オレ」との使用頻度との差は、あるのか無いのか。
4.そして、漢字で書くとするならば、どの「字体」をつかうか。幸い、「俺」については、字体は問題にはならない。「叱」「遡」などであれば、大問題になるが。
5.以上を総合的に判断したうえで、新常用漢字表への追加の是非は、判断されるべきものである。だが、委員会のこれまでの審議の記録を見ると、基本的には、漢字だけの出現リストに依存している。
簡単にまとめる、漢字だけの出現頻度リストから、日本語(国語)における、漢字のことがわかるはずはない。
また、サンプリングのかたよりも問題になる。
白石さんの記事を読んで、なんでこんな馬鹿なことを委員会でやっているのか、と思ったのは、「官能小説」の字を入れるかどうか。簡単ではないか、単に、当該文献の文字を含めたリストと、除外したリストを作って、くらべてみればいいだけのことである。漢字調査の出現頻度リストの、もとデータに、出典文献の記載が無い、というようなことは無いはずだ。まともな、言語についての調査であるならば。
もし、オリジナルの調査データに、出典が記載されていない、となれば、もはや、このようなデータに基づいた調査結果など、何の意味もない。すくなくとも、新常用漢字を決めるためのデータとしては、無意味。
もし、「広場の漢字」を決めるのであるならば、その「広場」を定義しないといけない。その作業の基本にあるのが、調査文献(WEBをふくむ)の選定に他ならない。
當山日出夫(とうやまひでお)
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