2009/02/09 當山日出夫
先日のワークショップの備忘録として書いておく。
まず考えなければならないのは、「表記の規範」のレベル。ある語を、「かな」で書くか「カタカナ」で書くか、「漢字」で書くか。「漢字」の場合、どの字を使用するか。
しかし、この根本的レベルの問題は、いまはおいておく。
漢字の規範といったとき、二つの方向がある。
第一に、理念としての規範。正しい文字というものがあるという意識。そして、それがどのようであるかは、時代・歴史・文化的背景によって異なる。
第二に、お手本としての規範。このとおりに書けばよい、ということ。
以上に分けて考えてみると、第一の意味での規範に言及したのが、小形さんの大日本印刷の拡張新字体の問題。時代的背景としては、当用漢字というきわめて厳しい漢字制限があって、その「表外字」(当用漢字が、漢字制限とはいっても、それで、すべての日本語が書けるわけではない、また、人名・地名の固有名詞を排除していることもある)は、必要。では、その「表外字」を、どう書くか。活字としては、どうデザインするか。
当用漢字の理念としては、字体の簡略化がある。これを、一つの理想とするのであるならば、拡張新字体は、生まれるべくして生まれる。また、この方が、使用する文字の字体の整合性がある。
また、この規範の意識が、時代によって変わる。当用漢字の字体簡略化ではなく、いわゆる「正字体」(旧字体? 康煕字典体?)に、方向がむかう。
第二の「お手本」としての規範。当用漢字であれ、常用漢字であれ、新常用漢字(仮称)であれ、表外漢字(印刷標準字体)であれ、さらには、康煕字典であれ、そこに掲載されているのと同じ「かたち」でなければならない、という規範の意識。
これは、拡張新字体などは、許さない。この意味での規範に言及したのが、狩野さん(イワタ)の発表。
なお、新常用漢字表(仮称)の、全体像が、すでにインターネットで見られる(文化庁のHPの議事録)。
[URL]
これが、平成明朝で示してある、とすると、新常用漢字準拠の、実際のフォントデザインは、どのような影響をうけるか。
當山日出夫(とうやまひでお)
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