『仕事するのにオフィスはいらない−ノマドワーキングのすすめ−』
2009-08-28


2009-08-28 當山日出夫

佐々木俊尚.『仕事するのにオフィスはいらない−ノマドワーキングのすすめ−』(光文社新書).光文社.2009
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この本、最後まで読むべし。

普通に最初から読んでいくと、会社づとめをして、自分のオフィスがあり、あるいは、自分の書斎で、物理的に固定された時間と空間からの解放。移動の電車内で、公園で、喫茶店(著者のおすすめは、スターバックスのようだが)で、モバイル器機さえあれば、仕事はできる。その代表が、iPHONE、であり、Googleが提供している、クラウドの各種のツール類。

まあ、ざっと、このような印象で、記述は進行していく。

だが、本書の最後に、こう書いてあることを、見のがしてはならない。単なる、外出先でのモバイル器機による仕事術についてのノウハウ本ではない。

ジャック・アタリ『21世紀の歴史』に言及して、次のように著者は記す。

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すべての知識を得ることはできないのに、人々はとりあえず目の前の知識をどんどんハードディスクの中に蓄積して、そうやって知識の在庫を増やすことで「すべての知識を手に入れられる」と感じるようになりますが、しかしこれは単なる幻想でしかありません。

それでも人生の時間は限られていて、すべての書籍を読んですべてのものごとに精通し、世界のすべての観光地を自分の目で見て、すべてを学ぶことは不可能なんだと、多くの人が悟るようになります。

そうして時間こそが唯一の希少価値のあるものだと人々は気づくようになります。

p.234

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当たり前のことである。

著者(佐々木俊尚)のように、私は外では仕事ができない。本を読むにも、自分の書斎でないとダメという人間。ノートパソコンをもってはいるが、外出先で使うのは必要最小限。文章を書くには、(今もそうであるが)自分のキーボード(東プレ)でないとダメ。

この意味では、ノマドの仕事のできるタイプではない。しかし、人生の時間という物理的な観点からみたとき、本書の最後に記してある著者の考え方に、共感する。

私のような、完全な書斎人間であっても、本書を読めば、それなりに有益な指摘がいくつあかる。特に、アテンションコントロール、いかに仕事の集中力を自分自身でコントロールするか、については参考になる。

ただ、現在問題になっている格差社会、特に、社会的階層と教育格差の問題点から考えると、本書の内容には、すなおに肯定できないところいくつかある。とはいえ、おすすめの本である。

當山日出夫(とうやまひでお)
[読書]

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