『ノルウェイの森』(下)村上春樹
2019-04-27


2019-04-27 當山日出夫(とうやまひでお)

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村上春樹.『ノルウェイの森』(下)(講談社文庫).講談社.2004 (講談社.1987)
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続きである。
やまもも書斎記
『ノルウェイの森』(上)村上春樹 2019年4月26日
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上巻に続いてすぐに読み終わった。読み終えて感じるところを書けば、次の二点になるだろうか。

第一に、この小説から感じるのは、なんともいえないような喪失感である。下巻を読み終わってから、上巻の始めを確認してみた。この小説は、主人公「僕」が三十七歳の時からの回想としてはじまっている。その「僕」が、1969年から1970年にかけてのできごとを思い返しているということで始まっている。

ここで物語られるのは、二十歳を迎えた「僕」の、十七歳のころの喪失の物語であり、また、二十において、直子という女性を失ってしまう物語でもある。あるいは、さらに、高も失ってしまうことにもなる。

一般的に言ってしまえばであるが、喪失感というのは、普遍的に共有できる心情である。この『ノルウェイの森』が、多くの人びとに読まれる小説であるというのは、全編にただよう喪失感にあるのだろうと思う。

第二に、この小説のここかしこに出てくる、なんともいえないような抒情的な場面の数々である。東京の街角の一コマ、あるいは、山の中の療養所の一コマ、それぞれが、くっきりとした抒情的なイメージで浮かび上がってくる。

この小説の叙情性というものが、読み終えた後の残る印象として強くある。

以上の二点が、『ノルウェイの森』の上下巻を読んで感じるところである。

そして、最後のシーン。この世界のすべてが、自己の中の一点にむかって凝縮していくような場面。これが強く印象的である。

追記 2019-05-02
この続きは、
やまもも書斎記 2019年5月2日
『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』(上)村上春樹
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[文学]

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