『蛍・納屋を焼く・その他の短篇』村上春樹
2019-06-03


2019-06-03 當山日出夫(とうやまひでお)

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村上春樹.『蛍・納屋を焼く・その他の短篇』(新潮文庫).新潮社.1987(2010.改版) (新潮社.1984)
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続きである。
やまもも書斎記 2019年6月1日
『カンガルー日和』村上春樹
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これは書いてもいいことだと思うが、『蛍』を読むと、『ノルウェイの森』と同じ(?)話しであることに気付く。あるいは、『蛍』が先に書かれて、そのイメージをふくらませて、『ノルウェイの森』になったと言ってもいいかもしれない。

そこにあるのは、なんともいえない叙情性である。

この短編集は、村上春樹の作品としては、初期の作品をあつめたものとなるようだ。どの作品も、人生の、世の中の、ふとした瞬間に感じるような、何かしら奇妙な感覚とでもいうべきものを表現している。

そして、なんともいえない、村上春樹の独自の文学世界を構築している。それは、生きているこの世界を、一瞬の間にとどめてしまって、反転させたような感覚……とでも言えばいいのだろうか。ともあれ、小説を読む、文学を読む、このことに芸術的感銘を感じさせる何かがあることは確かなことである。

村上春樹の長編を読んだ後で、短篇を順に読んでいるのだが、はっきり言って同じ作家が書いたとは思えないような気がしないでもない。長編の紡ぎ出す奇妙な物語世界とは違った、村上春樹の文学世界が、短篇のなかにある。

続けて、短編集を読んでいくことにする。

追記 2019-06-06
この続きは、
やまもも書斎記 2019年6月6日
『回転木馬のデッド・ヒート』村上春樹
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[文学]

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