『カメラ・オブスクーラ』ナボコフ/貝澤哉(訳)
2020-10-17


2020-10-17 當山日出夫(とうやまひでお)

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ナボコフ.貝澤哉(訳)『カメラ・オブスクーラ』(光文社古典新訳文庫).光文社.2011
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『文学こそ最高の教養である』の本を読んでいる。ロシア文学で、ナボコフが取り上げられている。ナボコフといえば、まずは『ロリータ』が有名である。これについては、すでに読んでみた。

やまもも書斎記 2020年10月1日
『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ/若島正(訳)
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ナボコフについては、『ロリータ』があまりにも有名すぎて、その他の作品にあまり目が行っていなかったということがある。これも『文学とは最高の教養である』の本を読んでみようと思わなければ、手にすることがなかったかもしれない。

読んで思うことは、次の二点ぐらいだろうか。

第一には、これは、『ロリータ』につながる系譜の作品であるということ。美少女に惚れ込んでしまった中年の男性が身を滅ぼしていくストーリーである。その身の破滅へところがりおちていくプロセス、あるいは、美少女のマグダの魅力で、この本は読者をひきつける。あるいは、『ロリータ』ほど、ストーリーが錯綜していない分だけ、この作品の方が、その印象が強くなるともいえる。

第二には、解説にも書いてあることがだ、この作品は、「見る/見られる」ということにこだわって書かれている。視覚的イメージでどう対象をとらえるか、重要なポイントになっている。作品の随所に「見る/見られる」をキーとした描写がみられる。

以上の二点が、この作品を読んで思うことである。

とにかく、まだ幼い美少女の妖艶な魅力を描くとなると、ナボコフはうまいと思う。そして、その美少女にかたむいていく男性のこころのうちを、なぞっていくところに、思わず共感して読んでしまうところがある。

とりあえず、『文学こそ……』の本を読んでいくことにして、再度たちかえってナボコフの作品は、読んでおきたいと思う。

2020年10月8日記
[文学]

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