2021-04-30 當山日出夫(とうやまひでお)
NHK 映像の世紀 第5回 世界は地獄を見た 無差別爆撃、ホロコースト、原爆
続きである。
やまもも書斎記 2021年4月23日
映像の世紀(4)「ヒトラーの野望」
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これも、月曜日の放送を録画しておいて、後になって昼間見た。COVID-19のため、居職の生活である。このような状況になると、昼間の時間にゆっくりと見るのがお気に入りである。
描いていたのは、第二次世界大戦のこと。
第二次世界大戦については、非常に多くの史料があり、また、研究もあり、さまざまに論じられてきた、いや、今も論じられ続けている歴史の出来事である。今のおいても、その歴史の呪縛から逃れてはいない。
いろいろと思うことは、あるが、見ていた思ったことを二つばかり書いてみる。
第一は、日本のこと。
太平洋戦争、大東亜戦争、ということで、日本も第二次世界大戦を戦った。その是非、歴史的な意味づけなどは、とりあえずおいておくとしても、なぜ、日本が戦争にふみきることになったのか、そのあたりのことが、語られていなかったことである。
無論、この論点に踏み込めば、日中戦争のみならず、満州国のことや、対米交渉など、さまざまに論じることになる。だから、あえて、ここのところには言及しない編集になっていたのかと思うところがある。しかし、今一つものたりない気がしてならない。
ヨーロッパにおいては、ヒトラーの意図のもとに第二次世界大戦が勃発したということになるのだが、それに加えて、イタリアは何故加わったのか、ソ連はどうであったのか、このあたりも、今一つ描かれていない。
だが、これは、このような編集方針なのであろう。ともかく第二次世界大戦は始まってしまった。そこで、いったい何がおこったのか、残された映像資料……そのなかには、狭義の記録映像もあれば、プロパガンダ映画として製作されて残っているものもある……から、その地獄絵図を描き出そうとしたということなのであろうと思う。
第二には、フランスのこと。
第二次世界大戦のなかでは一コマのできごとなのであろうが、印象に残るのが、フランスがナチスから解放された後のこととして、それまでの間、ドイツ軍となかのよかった女性たちがどのようなめにあわされることになったのか、ということ。
ここからは二つのことを思って見る。
一つには、人間とは、どこまでも滑稽であり、また、残酷にもなるものであるということ。ここには、アウシュビッツのような凄惨さないのだが、戦争という状況下において、人間がいかに卑小になり得るものなのかが、端的に表されているように感じる。
二つには、フランスはナチスに抵抗しただけではないということ。その女性たちが端的にあらわしているように、戦争中、フランスは、ナチスに協力したという側面も、歴史の一断面としては残っている。それがあたかも、無かったかのごとくにふるまっているのが、第二次世界大戦後の歴史秩序、歴史観というものなのかもしれない。
以上の二つのこと、日本がなぜ戦争にふみきったのか、また、フランスは単なるナチスの被害者ということではない……強いていえば、この番組があえて描かなかったこととして、このあたりのことが、印象に残っていることである。
第二次世界大戦をどう描くか、どのような歴史観を持つか、これは、今にいたるまで問われることである。ここで、単なる勝った側と負けた側、善と悪、単純な二分法では解決のつかない問題がある。その複雑さがあることを踏まえながらも、戦争の悲惨さを伝える編集になっていたと思う。
次週は、第二次世界大戦後の世界を描くことになる。これも、楽しみに見ることにしよう。
2021年4月28日記
追記 2021-05-07
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