映像の世紀プレミアム(1)「世界を震わせた芸術家たち」
2021-08-12


2021-08-12 當山日出夫(とうやまひでお)

映像の世紀プレミアム(1)「世界を震わせた芸術家たち」

NHKが「映像の世紀」「新・映像の世紀」と再放送をして、つづけて、「映像の世紀プレミアム」から、いくつか選んで放送するようである。

確か、この放送は見たかと思うのだが、「映像の世紀」「新・映像の世紀」と見直してみた目で、さらに見てみることにした。

よくまとまっていると感じる。第一次世界大戦から、二一世紀の今日まで、各時代の出来事をたどりながら、それを「芸術」という視点でとらえている。この場合、「芸術」はかなり広義にとらえることになる。時代を動かした「芸術」である。

その芸術家として、番組の最初に登場し、また、最後を締めくくったのは、トルストイであった。今、トルストイを芸術家とは思わないかもしれない。だが、トルストイの書いた小説は、芸術として書かれ、読まれたのであった。このあたりの価値観の移り変わりが、近代における文学のあり方を考えるうえで、興味深いところかとも思う。

ところで、このような放送を見ると、天邪鬼な私としては、いったい何が映っていないか……というようなことを思いながら見ることになる。出てきてもいいだろうと思いながら、出てきていないのが、プルーストである。あるいは、プルーストについては映像資料が残っていないのかもしれない。だが、それはそれとして、一九世紀から二〇世紀にかけての最大の芸術家の一人として、なにがしかの言及があってよかったかと思う。

最初の「映像の世紀」から比べると、「映像の世紀プレミアム」は、歴史に対してするどく批判的な視点をもっている。戦後、いわゆるカウンターカルチャーの若者たちを描いたシーンで、セックスとドラッグのことに言及していたのは、なるほどこれはこれで正しいと思って見ていた。(これが、以前の「映像の世紀」では、まったく言及することが無かったと覚えている。)

また、第二次世界大戦の終わりを、一九四五年九月二日としていたのも、これはこれで一つの歴史の見方である。戦艦ミズーリにおいて、日本が降伏文書に調印した日である。玉音放送のあった八月一五日ではなく。

さて、トルストイであるが……光文社古典新訳文庫版の『戦争と平和』がようやく完結するようだ。これも、読んでおきたいと思う。これまで、新潮文庫版、岩波文庫版と読んでいるのだが、新しい訳で、さらに読んでおきたい。芸術家が、歴史に対して何を語りうるのか、COVID-19の時代においてさらに考えてみたいと思う。

2021年8月11日記
[テレビ]

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