2022年4月8日 當山日出夫(とうやまひでお)
水村美苗.『日本語で書くということ』(ちくま文庫).筑摩書房.2022(筑摩書房.2009)
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先に読んだ『日本語で読むということ』につづけて読んだ。こちらの方は、どちらかというと、文学論、評論、研究というべき性質の文章を編集してある。読んでいろいろ面白いところがある。
第一に『行人』。
私は、漱石研究とか、近代文学研究とかからは、まったくの門外漢であるので、今どのように漱石の作品が論じられているのか、疎い。(今から強いて専門書や研究論文を読んでみようとも思っていない。ただ、好きで読むだけのことにしておきたいと思っている。)
なるほど『行人』というのは、このような解釈のできる作品なのかと、認識を新たにしたところがある。これまで、最後のHさんの手紙のところに描き出される、近代的知識人の苦悩……まあ、かなりステレオタイプのいい方になってしまうが……を軸に読んできた。が、『行人』という作品については、いろいろ多様な理解があることが分かる。
第二に『春琴抄』。
『春琴抄』は、最近、読みかえしている。おそらく、日本の近代文学における最高傑作の一つであろう。この小説の魅力が、「春琴伝」という架空の書物の部分と、春琴と佐助をめぐる語りの部分……この異質とでもいうべき部分の融合したところにある、これは、言われてみてなるほどそうだなと感じるところである。
その他、興味深い論考があるのだが、読んで印象に残るのは、上記の『行人』『春琴抄』についてのものである。
水村美苗の小説は、『続 明暗』は読んでいるのだが、他の作品は未読である。これを機会に、幸田文とか、また、水村美苗の小説など読んでおきたくなっている。
2022年3月24日記
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