『いだてん』あれこれ「長いお別れ」
2019-10-08


2019-10-08 當山日出夫(とうやまひでお)

『いだてん〜東京オリムピック噺〜』第38回「長いお別れ」
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前回は、
やまもも書斎記 2019年10月1日
『いだてん』あれこれ「最後の晩餐」
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東京オリンピックは開催されず、日本は戦争の道を進むことになる。

この回で印象にのこることは次の二点であろうか。

第一に、オリンピックの返上。

返上というのがいいのか、中止というのがいいのか、ちょっと迷うところがないではないが、結果的には、東京でのオリンピックは開催されることがなかった。といって、そのかわりに他の都市で開催ということでもなかったので……戦争でそれどころではなかった……中止ということになるのかと思う。

このオリンピック中止のところで、面白かったのは、競技場を木で作ってはどうかという軍からの提案。競技場をつくるための鉄が惜しいということのようがだ、まさか、来年二〇二〇年のオリンピックが、木でつくった競技場で開催になるとは、誰も想像しなかったにちがいない。このあたりの虚実はともかく、二〇二〇オリンピック開催を、批判的に見ているように思える。

また、オリンピックの中止を、選手の視点からとらえていたことも重要だろう。開催に尽力する田畑たちの苦労もあるが、それよりも、一番がっかりしたのは、選手である。その悲痛な思いをうまく表現していたと思う。

第二に、学徒動員。

オリンピックが中止になって、その後、太平洋戦争になる。昭和一八年の学徒動員、この催しが、雨の降るなか、神宮の競技場で開催になったことは、あまりにも有名である。また、そのときの映像も、よく目にするものである。

その神宮の競技場での行進のシーン、記録映像をカラー処理して見せていた。今の技術では、むかしの写真や映画など、白黒のものを、カラーで表現できる。と同時に、VFXの技術をつかって、その行事の場面を再現もしていた。このあたり、NHKは、かなり頑張って作っていると感じるところがあった。

以上の二点が、この回を見て思うことなどである。

さらに書けば、若いときの志ん生が、いよいよ「志ん生」の名前を襲名することになる。このあたりの寄席のシーンなど、実によかったと思う。また、小道具としては、嘉納治五郎の残したストップウォッチをうまくつかっている。

次回、舞台は満州にうつるようだ。虚実いりまじってのこのドラマにおいて、虚の部分になるのかと思うが、どのように描くことになるのか、楽しみにみることにしよう。

追記 2019-10-15
この続きは、
やまもも書斎記 2019年10月15日
『いだてん』あれこれ「懐かしの満州」
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[テレビ]

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