『復活』(上)トルストイ/岩波文庫
2020-03-05


2020-03-05 當山日出夫(とうやまひでお)

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トルストイ.藤沼貴(訳).『復活』(上)(岩波文庫).岩波書店.2014
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この作品は読んでいない本であった(と思う。)ひょっとして若いころに手にしたかもしれないのだが、今ではすっかり忘れてしまっている。昨年末(二〇一九)、『アンナ・カレーニナ』の光文社古典新訳文庫版(望月哲男訳)を読んだ。トルストイの作品を続けて読んでおきたくなって読んでいる。

やまもも書斎記 2019年12月27日
『アンナ・カレーニナ』トルストイ/望月哲男(訳)(一)
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岩波文庫で読んでみることにした。新潮文庫でも出ているのだが、岩波版の方が新しく刊行になっている。解説から読むと……この岩波文庫版は、古い訳をもとにしている。

一九六九年に、横田瑞穂・藤沼貴共訳で、講談社の世界文学全集。
一九七五年に、藤沼貴が全体に手を入れて、講談社の世界文学全集。
岩波文庫版は、これをさらに改稿したものである。

ただ、訳者の藤沼貴は、二〇一二年に亡くなっている。そのため、解説としては、一九七五年の講談社版の再録である。あとがきを、阿部昇吉が書いている。(以上の事情は、このあとがきによる。)

読んでみての印象は、訳文が古めかしいという感じである。ちょっと前の翻訳文である。これは、オリジナルが、一九六九年ということを考えれば、このような文体かなと思う。そして、この文章は、まさに文学の文体であることを感じる。

えてして、海外文学の翻訳は、ただ日本語に訳しただけという生硬なものがある。しかし、この作品の訳文は、実にこなれている。文学の日本語になっている。この日本語訳文が、『復活』という作品の魅力としてあると感じる。

上巻を読んだところで思うこととしては、次の二点であろうか。

第一に、ロシアにおけるキリスト教の信仰。「復活」というタイトル自体が、キリスト教の重要な要素である。それを、ロシア正教において、どのように人びとが理解して感じ取っていたことなのか、興味がある。あるいは、今の私には、今一つわからないところでもある。

第二に、農奴解放。主人公のネフリュードフは、貴族として土地を所有していることに罪悪感を感じている。それを、土地をたがやす農民に分け与えようととする。だが、そのネフリュードフの気持ちが理解されることは難しい。このあたりは、著者のトルストイの思想を強く反映したところだろうと思う。

以上の二点が、上巻を読んで思うことなどである。

さらに書けば、帝政ロシアの時代における、裁判、それから、犯罪者がはいる監獄のことなど、これはこれとして、非常に興味深いものがある。

それから、余計なことかもしれないが、「カチューシャの唄」が、この作品が演劇として日本で上演されたときに作られたものであることを知った。「カチューシャの唄」は、今では、YouTubeで聴くことができる。いろんな歌手が歌っているようだ。

「カチューシャかわいや わかれのつらさ」の歌詞である。松井須磨子の歌っているのを聴くことができる。
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さて、続いて下巻である。ネフリュードフとカチューシャは、これからどうなっていくのだろうか。楽しみに読むことにしよう。

2020年2月24日記

追記 2020-03-06
この続きは、

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