2021-04-26 當山日出夫(とうやまひでお)
小川洋子.『シュガータイム』(中公文庫).中央公論新社.1994(中央公論新社.1991)
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続きである。
やまもも書斎記 2021年4月19日
『完璧な病室』小川洋子
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たまたま買った順番で書斎の床の上に積んである小川洋子の本を読んでいる。これは、小川洋子の最初期の作品ということになるようだ。
読んで思うことは次の二点。
第一には、やはり小川洋子ならではの、透明感のある作品であるということ。出てくるものごと、できごとの多くは、決してきれいなものばかりではない。主人公の女性は、食欲の異常がある……過食症といってもいいのだろう、食べることを止められないでいる……その弟は、それ以上に体格が成長しないという病気、付き合っている男性はいるが性的な関係は一切ない、その他、普通の作家が普通に書けば、グロテスクな露骨な描写になりがちな題材をあつかっていながら、全体としてきわめておちついた透明感のある文章でしあげてある。
第二には、これは青春小説として読めるということ。大学の野球のリーグ戦……おそらく東京六大学あたりをイメージするといいと思うが……のことが出てくる。毎年、季節がめぐってくれば野球の試合がある。それを見に行く仲間たち。そして、それが四年間つづいた後に、終わりとなる。そんなことになろうとは、はじめは思ってもいなかったのだが。若さとは、それを失うときに気づくものである。
以上の二点ぐらいが、この小説を読んで思うところであろうか。
あとがきによれば、作者としては、これだけは書いておきたかった物語であるらしい。それを意識してということは特にないが、しかし、小川洋子の文学世界が、青春小説の形で結実していると感じられる。
2021年4月13日記
追記 2021年8月23日
この続きは、
やまもも書斎記 2021年8月23日
『やさしい訴え』小川洋子
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