『青の時代』三島由紀夫/新潮文庫
2022-05-20


2022年5月20日 當山日出夫(とうやまひでお)

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三島由紀夫.『青の時代』(新潮文庫).新潮社.1971(2011.改版)
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書誌を書いて気づくのだが、この文庫本が出たのは、三島が亡くなった翌年のいことになる。没後の刊行である。

この作品を読むのは、はじめてである。名前は知っていた。光クラブの事件に題材をとった作品であることも知ってはいた。が、何となく手にすることなく過ぎてしまっていた作品である。

読んで思うことは、次の二点。

第一に、ある時代を描こうとした作品なのだろうということ。この作品の成立は、昭和二五年である。まだ戦後間もないころといってよい。光クラブの事件は、同時代の事件といってよいのだろう。その時代のなかにあって、同時代を三島の目で描いて見せた、ということになろうか。

第二に、行動と認識。この作品には、短い序文がついている。そのなかで、三島由紀夫自身が、行動と認識と述べている。こうある……「人は行動するごとく認識すべきであっても、認識するごとく行動すべきではないとすれば」。この小説における、行動と認識はどう考えることができるだろうか。光クラブという詐欺事件において、それが欺瞞とわかっていて行動している主人公は、はたして自らの行動をどう認識していたとすべきなのだろうか。

以上の二点のことを思って見る。

おそらく、行動と認識ということは、三島由紀夫の文学をつらぬくキーワードといってよいだろう。結局、最後になって、三島由紀夫は、ある行動に出ることになったのだが、その背後には、三島由紀夫なりの認識があってのことになろうか。

2022年5月16日記
[文学]

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