『フルスロットル』ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子(訳)
2022-05-21


2022年5月21日 當山日出夫(とうやまひでお)

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ジェフリー・ディーヴァー.池田真紀子(訳).『フルスロットル−トラブル・イン・マインド T−』(文春文庫).文藝春秋.2022
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ジェフリー・ディーヴァーの本は、だいたい買って読んでいるかと思う。毎年、新刊が出る。待っていれば文庫になるのだが、基本的には単行本が出た時に買って読んでいる。これは、昔、『ボーン・コレクター』を読んで以来の習慣のようなものである。

この本は、ジェフリー・ディーヴァーの短篇集。二〇一四年の刊行のようだ。それを、池田真紀子の翻訳で、文庫版オリジナルとして刊行。もとの本を二分冊に編集しなおして、その最初の方になる。

ジェフリー・ディーヴァーというと、リンカーン・ライムのシリーズの長編というイメージが強い。だが、これを読むと、巧みな短篇ミステリ、それも「本格」の書き手であることが分かる。序文がついていて、そこで、長編ミステリと、短篇ミステリについて、少し解説めいたことが書いてあるのだが、なるほどとうなづくところがある。まさに、短篇ミステリの醍醐味を味わえる作品集になっている。

収録作品は、どれも面白いが、私が読んで興味深かったのは、タイトルにもなている「フルスロットル」。キャサリン・ダンスの作品である。これまでの、キャサリン・ダンスを主人公とする作品(長編)は、読んでいる。そうすると、人間嘘発見器のストーリーの展開を思ってしまうのであるが、そうなってはいない。意外と、時計を使ったトリックになっている。なるほど、キャサリン・ダンスを主人公にして、このようなトリックの作品を書くこともできるのかと、ここは感心したところである。

続編は、『死亡告示』である。つづけて楽しみに読むことにしよう。

2022年5月13日記
[ミステリ]

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