コズミックフロント「地動説 〓謎を追い続け、近代科学を生んだ人々の物語〓」
2025-05-02


2025年5月2日 當山日出夫

コズミックフロント 地動説 〓謎を追い続け、近代科学を生んだ人々の物語〓

再放送である。最初は、2022年10月27日。

今の我々は天動説を信じているが、どういう根拠でそれが正しいと言えるのか、きちんと説明できる人は少ないかもしれない。

私は、マンガとアニメは見ない方針なので(別に嫌いとかではない、こういうジャンルのものまで読んだり見たりしだすとキリがないからである)、『チ。』は、名前は知っているし、今、NHKがアニメの放送をしていることも知っているけれど、見ようとは思っていない。

番組のなかで紹介されていたことになるが、科学の学説は検証できなければならない、という意味のことが出てきていた。いわゆる反証可能性ということになり、はっきりとこれが意識されるようになったのは、ポパー以来のことだろうと思っているので、ヨーロッパの中世を舞台にしたマンガのなかで、こういうことが出てくるとすると、ちょっと違和感を覚える。

天文学というのは、太陽や月や星の観測データと、その動きを説明する原理の研究、ということでいいだろうと思う。中世まで、天体の動きを観察するのは肉眼によることになる。観測の補助的なツールは開発され、また、説明するための数学の発達ということはあったのだろうが、大きな枠組みとしては、神の作った宇宙という存在が、そのような動きをする説明が、どれだけの説得力があるか、ということになる。よりシンプルで、美しい、あるいは、エレガント、と言ってもいいかもしれないが、そういう説明ができるなら、それが真実である……この基本の方向は、変わらなかったということでいいだろう。

言いかえるならば、天動説が迷妄であったのではない。地動説の方が、よりシンプルで美しい説明になるから、それを真実と考えるようになった……私としては、このように考えておきたい。惑星の逆行という現象をふくめて、さまざまな観測データを、地動説の方が、エレガントに説明できる、こういうことでいいのだろうと思う。

それを、現代の科学史の概念でいうならば、パラダイムの変換ということになる。パラダイムということばは、『科学革命の構造』(クーン)で使われたことばであるが、今では、一般的なことばになってしまっている。

その後のこととしては、相対性理論が生まれ、ビッグバンの発見、という流れになっていくことになる。そして、ビッグバンをふくめて、それ以前のことをどう理論的に考えるか、また、それを実証するためには、どういう観測データが必要になるのか、ということだと思っている。

私として気になるのは、天文学から「神」が消えてなくなるのは、いつだったのか、あるいは、今でも消えてはいないのか、ということがある。(別に「神」の存在を認めても、宇宙の創成を科学的、理論的に語ることは可能だと思っている。)

また、西欧の科学の発展に、イスラム世界が大きく寄与していたことは、これは、科学史のみならず、哲学などの分野においても、常識的なことであると思っている。

この番組のなかでは省略されていたことになるが、地球を球体としてとらえ、太陽系を(天動説ではあっても)三次元空間のなかの天体の動きとして考えるようになったプロセスも、非常に重要な、科学的知見の進歩であったはずである。

観測データの信頼性、その技術の歴史、それと、全体を説明するよりシンプルで統合的な理論の構築、私としては、こういう視点から考えることにしたい。

2025年4月27日記

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