『江戸漢詩』から(その三)
2018-12-22


2018-12-22 當山日出夫(とうやまひでお)

続きである。
やまもも書斎記 2018年12月9日
『江戸漢詩』から(その二)
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『白痴』(ドストエフスキー)を読んでいる。その合間の本として、『江戸漢詩』(中村真一郎)を見ておきたい。

簾前棲鳥起
岸暗水光浮
側臥吹烟処
暁帆上枕頭

作者は前回と同じく、寺門静軒。

これを中村真一郎は、次のように読み下している。

簾前、棲鳥起チ、
岸暗クシテ、水光浮ブ。
側臥烟ヲ吹ク処、
暁帆枕頭ニ上ル。

評語は次のごとくである。

同じく川に沿った料亭の、今度は明方の風景。開け放した座敷の縁に簾が垂らしてあり、そのまえの砂地から水鳥が飛び立つ。(中略)まだ川岸は暗くて、そのなかに水が光って見える。詩人は寝床のなかで、覚めぎわの煙草をふかすと、その煙りの向うに白帆が見えてくる。

以上、pp.111-112。

江戸時代、川べりの料亭の朝の風景を、あざやかに切り取ている。叙景の詩であるが、このなかにはそこはかとない叙情性がある。
[文学]

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