2024年3月6日 當山日出夫
BS世界のドキュメンタリー「それでも日は昇る パキスタン 女性たちの行進」
二〇二一年、パキスタンとカナダの制作。
パキスタンにおけるフェミニズムの活動についてである。
フェミニズムという動きについては、今の時代の大きな流れとしてあることは理解しておくべきだろう。
ここで思ったことを書いてみる。ちょっと天邪鬼な観点からになるが。
「自分の体のことは自分で決める」。これは本当に正しいのだろうか。無論、他人から強制的にその生き方を決められるということは理不尽である。だが、人間の自由意志というものは、本当に実在するものとして考えていいのだろうか。
人間が、その生まれ育った歴史的条件、文化的環境、人間社会の関係、地理的風土などの影響のもとにある。それからまったく自立した自由な個人の自由な考えというものがあり得るとは思えない。この意味では、フェミニズムの発想もまた、一つの歴史の所産である。だからといってフェミニズムを否定しようとは思わない。およそ主義とか主張には、そのような側面があるということに自覚的であるべきではないだろうか、ということである。
伝統的なイスラムの価値観に対して、フェミニズムの考え方で抵抗するという姿勢は、十分に納得できるものである。イスラムの世界もまた変わっていかざるをえないと思う。
ところで、西欧的な価値観に対して、非西欧的な、あるいは、近代以前の古くからの伝統的価値観を重視するという考え方もある。近年の事例でいえば、気候変動の問題など、近代的な人間社会の生き方の大きな問題である。
これは、ただ過去に帰れということにはならない。そこで、古くからのコミュニティや生活様式を尊重するということはあっても、家父長制は受け入れない、フェミニズムは尊重されなければならない、これは、どう整合性をつけることになるのだろうか。
今、実際に困窮している人びとが抗議の声をあげることは当然である。だが、その一方で、人間とはどんな存在であるのか、歴史から何を学ぶことができるのか、冷静な議論も必要なのではないかと私は思っている。
2024年2月7日記
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