『虎に翼』「女三人あれば身代が潰れる?」
2024-09-15


名前については、猪爪の家族の名前も気になる。直言、直明、直治、直人、直正、直寅、と男性の名前には「直」が使ってある。また、星の家でも、子どもの名前は、朋一である。また、朋成という子どもも登場していた。初代最高裁長官だった星朋彦の「朋」が使われている。このような事例は、あきらかに、男性中心の家父長制的家族観の名残でしかないと思えるのだが、どうなのだろうか。おそらく、これは、ドラマの始めの方では、猪爪の家族の仲の良さをあらわすものとし、「直」を使う名前で設定したのだろう。しかし、ドラマの途中から、家父長的家族観否定という方向に向いてきてきたのだが、いまさら方針を変更するわけにもいかず、花江の孫に、直寅というような名前をつけることになってしまったのではないだろうかと思える。どうだろうか。要するに、このドラマは計画性がないのである。主張しているフェミニズムも、家父長制の否定も、男女別姓も、あとから思いついてとってつけただけのことなのである……としか思えない。だから薄っぺらい描写しかできない。

優未のことも釈然としない。

この週になって、寄生虫の勉強が好きになって大学院の博士課程まで進学したことになっていた。

まず、なぜ寄生虫に興味を持ったのか、その経緯がまったくなかった。何に対して興味を持つかは、人それぞれだとは思うが、それ以前に、知的好奇心にみちた子どもであったかどうか、ここのあたりが重要である。何か興味のあるものがあると、それにひかれて夢中になる、という性格ではなかった。研究者としては、普通の学校の勉強ができるかどうかもだが、このような性格(知的好奇心)であるかどうかが、きわめて重要である。

現在、日本寄生虫学会のHPを見ると、寄生虫について、研究のできるところというと、おおむね大学の医学部か獣医学部ということになる。となると、学部は六年間である。普通の大学の理学部で勉強したなら、航一の言っていた九年間の勉強で大学院の博士課程ということもありうるが、さて優未は、どんな大学にいったのだろうか。

もし、医学部か獣医学部に進学していたとするならば、学部を卒業して国家試験をとおれば、医師か獣医師の資格があることになる。その資格をいかして働くこともできるはずだが、航一の科白からは、そのようなことはなかった。

ここは、なぜ寄生虫の研究にすすんだのか、そのきっかけは、どの大学でどんな勉強をして、どんな先生がいて、どんな友達がいて、というあたりを少しでも描いておくべきことだったと思える。

優未と航一が言い争っていた。優美は、もうこれ以上寄生虫の研究をつづけても、その先にポストが保証されないからやめると言っていた。航一は、せめて大学院を修了するまで続けろと言っていた(今でいえば、単位取得退学である)。それについて、寅子は、優未に、勉強を辞める選択肢を与えるべきだと言って割ってはいった。ここで、どの地獄を選ぶかは自分で決めろ、という意味のことを言っていた。

このときの寅子の言ったことが不自然に思えてならない。かつて寅子は、高等試験(司法科)の受験が女性に可能になるかもしれないというだけで、明律大学の女子部に入学した。制度が正式に改まったわけでもなく、試験に受かる保証など約束されていなにもかかわらず、法律の勉強にはげんだ。また、戦後になって、裁判官に女性がなれないのはおかしいと言って、直談判で自分を裁判官に採用するよう求めた。まだ、女性を裁判官として採用するかどうか正式に決まっていないにもかかわらずである。

このような寅子の経歴を見ると、優未が大学院博士課程を終えてポストの保証があるかどうかわからないにしても、少しでもその可能性があるならチャレンジすべき、研究者への道を諦めてはいけない、と励ます立場であるはずだと感じるのだが、どうだろうか。(もしダメだったとしても、星の家での家事手伝いという立場があるのだが。)


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