『虎に翼』「女三人あれば身代が潰れる?」
2024-09-15


たとえば、少年院に行くことになったが、無事に更生して働いている、というような少年の姿が、まったく出てきていない。上野の山田轟法律事務所では、恵まれない少年少女の面倒をみていた。そのなかに、少年法とかかわる子どもがいてもよかったが、そのようにはなっていなかった。

少年法改正の背景には、当時の世相が影響してのことであるらしい。だが、その当時の世相を、突然に記録映像として出してきても、ドラマのこれまでの流れのなかで意味がわからない。学生運動が、少年法改正の議論の背景にあるような描き方だったが、それよりも重要なのは、その他の少年犯罪の実態と、それに対する世の中の人びとの意識であったはずである。

たしか新潟の裁判所で、一九才と二〇才の年の違いはなんなんだ、と言った少年が法廷にいたことがあった。そのとき、寅子は裁判官として、その少年と対峙していた。このとき、寅子が、その少年の問いかけに答えるというシーンはなかった。法廷で答えられなくて、後で自分一人になって考えるということもなかった。もし、このようなシーンがあったなら、少年法の改正について、寅子がどう考えるか、少しは説得力のある展開になったはずである。寅子は、新潟に行って初心にかえって勉強しなおしてくると言っていたかと思うのだが、いったい何を学んだというのだろうか。

この週のはじまりのところで、女性の法曹のあつまりが、笹竹(竹もと)であった。女性は裁判官に向いていないという、最高裁での見解(この時点では非公式)について、仲間で議論するためだった。このとき、秋山がいなかった。裁判官として寅子の後輩で、妊娠、出産について相談していた。寅子は、秋山の居場所を作ると、言っていた。であるならば、せめて科白で、秋山さんは転勤でどこそこに行ってしまっているけど、後で私が連絡しておく、と語るようなことがあってしかるべきだろう。それさえなかったということは、秋山のエピソードも、ただそのときの寅子の科白を言わせたいだけのもので、登場人物としては使い捨て、ということになるが、それでいいのだろうか。あるいは、秋山が、出産を機に裁判官を辞めることになったとしたならば、そのことについて言及がないのはおかしい。このドラマの作者は、本当に法曹で働く女性のことを考えて作っているのだろうかと、思うことになる。

ともかく、このドラマの始めの方では、穂高先生という法律について考えるときの軸になる人物がいた。だから、寅子はぶれないでいられた。その穂高先生を退場させてしまって、代わりになる人物がいない。場合によっては、百合が元最高裁長官の妻ということで、ドラマの軸になりえたかもしれないが、そうはなっていなかった。

その他、尊属殺人のあつかいかたなど、いろいろと思うことはあるが、これぐらいにしておきたい。

2024年9月13日記

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[テレビ]

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